公道を走るトラックを整備する責任の重さを実感。
父親がトラック運転手で、子どもの頃によく乗せてもらった楽しい記憶があります。当初は自分もトラック運転手に憧れていましたが、父親から運転手は家族と一緒に過ごす時間が取りづらいといった大変さも聞いて、メカニックを目指すことに。そして自動車整備の専門学校で学び、就職活動を始めた時に思い出したのが、父親の「三菱ふそうのトラックが一番乗りやすい」という言葉です。乗り手が良いというトラックなのだから間違いないと思い、学校に求人票のあった神奈川三菱ふそうに入社を希望しました。
新人研修で痛感したのは、学校での学びはあくまでも机上の知識ということです。もちろん、それも必要なのですが、仕事では実際に公道を走るトラックを扱うため、学生時代よりはるかにハイレベルな知識や意識が求められることを知りました。例えば、学校の実習で修理を終えた後、ボルトが1個余っていたことがありました。その時は、「次は注意しよう」という程度で終わりましたが、もし仕事で同じ状況が起きたとしたら、そのまま走らせることは絶対に許されず、最初からやり直しになります。現場で目の当たりにするメカニックの真剣そのものの表情を見て、学生気分は一気に吹き飛びました。そして研修を終えて、自分用の新品の工具一式を渡された時は何とも晴れがましい気持ちになり、これから本格的にメカニックとして働いていくという自覚やプライドが芽生えました。
知識とスキルの幅を広げながら順調にスキルアップ。
私が配属された横浜支店は、13本の整備ラインを要する大規模な工場です。三菱ふそうのトラックやバスのほか、大型トレーラーなど多様な車種に対応しており、地方から走ってきたトラックに故障が発生し、飛び込みで修理を依頼されるケースもあります。そのように幅広い経験を積める環境であることは、駆け出しのメカニックとしてラッキーでした。1年目は主に定期点検や車検の作業の連続で経験を重ねました。20名ほどのメカニックが2グループに分かれて、各グループが1日平均5台ほどを担当します。メカニックは20代~30代が中心で、職場は和気あいあいとした雰囲気です。仕事中は誰もが真剣ですが、休憩中はコミュニケーションを楽しんでおり、気持ちにメリハリをつけやすい環境です。
2年目からは、一般整備を任されることが徐々に増えてきました。定期点検や車検は基本的に法令で定められた項目に沿って確認しますが、一般整備は車両の状態を良好に維持するための修理やメンテナンスで、時間をかけて故障の原因を突き止めたり、消耗品の状態などをチェックしたりしながら、いわゆる重整備を含めた作業を一人で進めていきます。どちらも重要な業務ですが、より汎用的なスキルが求められる一般整備を任せてもらえることが嬉しく、プライドを持って取り組んでいます。
仕事からは逃げられない。メカニックとしての責任感。
日々の業務を通して痛感しているのは、仕事からは逃げられないということ。お客様のトラックをお預かりして、「故障の原因は分かりませんでした」とでも言ったら、次からは任せてもらえません。初めて見るエラーコードが表示されていたら、整備解説書やパソコンで調べて要因を推定したり、経験豊富な先輩からアドバイスをもらったり、試行錯誤を重ねて解決していきます。正直言って、自分はそれほど真面目に勉強する学生ではありませんでしたが、今現在が人生で一番勉強していると自信を持って言えますね。だからこそ、知識とスキルの幅がグングンと広がって成長できていることを感じられます。
メカニックの大変さであり面白さでもあるのが、トラックの機能はどんどん進化していることです。今では様々な機能が電子制御化され、各種センサーや衝突安全装置などの装備が当たり前となり、一昔前と比べると、メカニックに求められる知識やスキルは非常に複雑化、高度化しています。いわゆる「ガラケー」が「スマホ」に変わったような進化が、トラックにも起こっているのです。新たな知識を得るのはメカニックとして大きな喜びでもあるので、勉強会などに積極的に参加して、つねに最新技術にキャッチアップしていく気持ちで取り組んでいます。
メカニックとしてどこまでも技術を高めたい。
仕事のやりがいを最も感じるのは、整備や修理を完了した時ですが、実は私の自宅は工場に近く、周辺にお客様の企業が密集しています。そのため、普段から自分が心を込めて整備したトラックなどが公道を走行している様子を見かけることが多く、そんな時にも大きな喜びを感じます。妻と一緒に歩いている時には、「あのトラックは俺が修理したんだよ」などと、つい自慢してしまいますね(笑)。
3年目を迎えてから、ようやく独力で一通りの仕事をこなせるという自信が付いて、後輩に指導する機会も増えました。とはいえ、まだまだ不足している知識や技術は多く、当面の目標は苦手意識のある電気系の配線に関するスキルを高めることです。今は先輩に教わりながら必死に作業していますが、自分自身で考えて問題を解決できるようになりたいです。今後のビジョンとしては、できるだけ長く現場での作業に携わり、メカニックとしてどこまでも技術を高めていきたいですね。